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■ミュージカル『太平洋序曲』 海宝直人さん《インタビュー》

梅田芸術劇場_太平洋序曲_チラシ_450

ミュージカル
太平洋序曲
PACIFIC OVERTURES

INTRODUCTIONはじめに

近代日本の夜明けを描いた
ソンドハイムの意欲作、
ついに日英合作で上演!

ミュージカルの巨匠ソンドハイムの意欲作『太平洋序曲』は、江戸時代末期の日本が鎖国を解き、西洋化へ向かう激動の過程を描いた作品。今回は梅田芸術劇場と英国メニエールチョコレートファクトリー劇場の共同制作で上演。西洋の作家によって描かれた「日本」という点で唯一無二の作品を、西洋と日本が融合した新演出でお届けします。

日英のコラボレーションで新たな『太平洋序曲』の世界を創り上げるのは、錚々たるメンバー。クリエイター陣には、オリヴィエ賞ノミネート演出家マシュー・ホワイトをはじめ、音楽監督キャサリン・ジェイズや美術家ポール・ファーンズワース、衣裳家前田文子らが集結。出演は、物語を進行する狂言回しに山本耕史・松下優也、浦賀奉行としてペリーとの交渉に臨む香山弥左衛門に海宝直人・廣瀬友祐、日本が開国に向かう中で武士道に目覚めるジョン万次郎にウエンツ瑛士・立石俊樹がそれぞれダブルキャストで挑みます。

梅田芸術劇場_太平洋序曲_cast_450

STORYあらすじ

時は江戸時代末期。海に浮かぶ島国ニッポン。

黒船に乗ったペリーがアメリカから来航。鎖国政策を敷く幕府は慌て、浦賀奉行所の下級武士、香山弥左衛門(海宝直人・廣瀬友祐)と、鎖国破りの罪で捕らえられたジョン万次郎(ウエンツ瑛士・立石俊樹)を派遣し、上陸を阻止すべく交渉を始める。一度は危機を切り抜けるものの、続いて諸外国の提督が列を成して開国を迫りくる。

目まぐるしく動く時代。狂言回し(山本耕史・松下優也)が見つめる中、日本は開国へと否応なく舵を切るのだった。

INTERVIEW 海宝直人さん インタビュー

梅田芸術劇場_太平洋序曲_インタビュー2 俳優・海宝直人さん

出演が決まったときのお気持ちは?

初めてソンドハイムさんの作品に出たのは『メリリー・ウィー・ロール・アロング』でしたが、とても印象に残っています。ソンドハイムならではの緻密な音楽をしっかりハーモニーとして成立させ、芝居をしていくのかというところが大変だった思い出もありながら、自分にとっては音楽スキルの財産にもなっている。だからこそ、また関わりたいと思っていました。
日本人として『太平洋序曲』に出演できるのはとても光栄です。ブロードウェイで、日本を舞台にして創られている作品はなかなかないので。ブロードウェイの初演でも良い意味で賛否が分かれた作品でもあるし、演出によって空気感やメッセージ性が大きく変わると思うので、今回はマシュー・ホワイトさんの創る『太平洋序曲』に参加できるんだなとワクワクしています。

香山弥左衛門という役の印象や、現時点でどう演じたいと思っているか教えてください。

ブロードウェイ初演の印象だと、それぞれのキャラクターがすごく立っていました。その中で香山という人物はとてもニュートラルというか、本当に普通の人として描かれていた。マシューさんからのメッセージでは、観客が感情移入できる、自分を重ねて見られるようなリアリティのあるキャラクターだと。彼の苦悩や悲しみ、思いを共感してもらえるような役になっていくんだろうなと思っているところです。

マシューさんは香山を“美しく複雑な役”とも表現されていましたね。

確かに複雑な面はありますよね。いきなり呼び出されて、アメリカ人を追い出せと言われて、なんとかかんとか知恵を絞り出して乗り切っていく。その中で、彼なりの葛藤があったり、愛する人との別れや友との決別があったり。
西洋文化に傾倒していくキャラクターですが、僕には日本人を代表する役のようにも感じます。海外の人から見ると日本人は独特だろうと思うし、変化というものに対して特殊な歴史を辿ってきている気がします。鎖国から開国、明治時代の西洋化、第二次世界大戦後の高度経済成長で焼け野原から一気に世界と肩を並べる国になって…。変化に対する順応性が高いというか、良くも悪くも受け入れる能力がある。香山を通して、そういう日本人の本質を見ている感覚になります。

1976年の初演、2000年代頭の宮本亜門演出での上演を経て、今作は2023年に上演。今の日本で上演されることをどう感じますか?

初演は海外で創られ、宮本亜門さんが日本人の感覚で再解釈して、今回は日英の共同制作。日本の俳優と海外のクリエイター陣が一緒に創っていきます。そこが興味深い流れだし、また新しい形で作品にアプローチできるのだと思います。
独特な民族性を持った日本という国を、この国で生きているからこそ僕らはあまり意識していません。この作品を通して、あらためて日本はどういう国なのか、世界からどう見えているのか、俯瞰した視点から感じることができると思います。グローバル化が進み、アイデンティティがわかりづらくなっている時代に、新たな発見があるんじゃないかな。

今作で海宝さんが歌う楽曲について教えてください。

梅田芸術劇場_太平洋序曲_インタビュー1

初めて聴いたときは、「Poems」という曲が印象的でした。香山とジョン万次郎が親交を深めていくシーンの曲で、日本語の歌詞になったときにどうなるか楽しみです。 「There Is No Other Way」は妻のたまてとのデュエットで、とても美しい曲。『太平洋序曲』では、モチーフがリフレインされる曲が多く、中毒性があるんですよ。聞いているうちにメロディが頭の中でくり返されます。ソンドハイムさんの楽曲は、半音と全音、オーケストラとの音のぶつかり合い、緊張と緩和が計算されていて、その中で物語や感情を表現していくイメージ。きちんとメロディを歌うことで、哀愁や寂しさや複雑な感情が伝わるんだと思います。それを、どの曲でも大事にしたいですね。
「Bowler Hat」は、香山というキャラクターを表す楽曲で、これもまたクセになります。気づいたら口ずさんでいるような、この作品の中ではキャッチーな楽曲なんじゃないかな。練習しているからそう思うのかも(笑)。くり返しの中で変化していく…という表現がすごいなと思います。

2018年にロンドンで舞台デビューした際の公演を、マシューさんもご覧になっていたそうですね。そこで得たことや今回の作品で活かしたいことはありますか。

活かせるかどうかはまだわからないけど、自分としてはすごく大きな経験でした。とっても大変だったので…。稽古期間もあまりなくて、行ってみたらどんどんやることが増えちゃって。タップ踏めるの?やろうやろう!みたいな。日本語でさえやったことないのに、英語でラップをしたり。追い詰められながら必死で自主稽古しました。底力を鍛えられたし、向こうの俳優さんと交流できたのもいい経験でした。自分の俳優人生において、糧になっているのではと思います。

舞台に立つときに大切にしていることは?

俳優としてずっと課題でもあるんですけど、舞台上に立っていて、ともに演じている相手役やいろんなキャラクターと交流するわけですが、その時にいかにきちんと交流するかを大切にしています。ちゃんと“聞く”ということができるか。聞いているつもりでも物理的に音を聞いているだけにならないように、相手が言っていることや思いを新鮮に聞いて反応する。本当にあたりまえの基本の部分なんですけど、意外とこれが、ちゃんとできるかどうかはなかなか難しい。そこを大事にしたいと思っています。

撮影:岩村美佳 
ヘアメイク:本名和美(RHYTHM)
スタイリスト/津野真吾(impiger) 
衣装協力/suzuki takayuki