スーパー歌舞伎Ⅱ（セカンド）「新版 オグリ」への思いを語りました
令和最初のスーパー歌舞伎です。原作の梅原 猛先生が今年お亡くなりになりましたけど、その追悼の意も込めて「オグリ」を上演することになりました。まだ詳しいことは話せませんが、以前の上演（平成3年）から時間がたっていることと、日本人の心情に訴えかける典型的な構造をもったしっかりとした物語だと思ったこと等から「オグリ」を新版として上演しようと思いました。
主役によってテイストが違ってくるし、隼人くんが小栗判官の時は私も違う役で出るので、一粒で二度おいしいような感じですかね。
隼人くんは若さ溢れていますし、同じ演出ですけど扮装も変える予定です。物語の年齢軸と実年齢が重なるのは隼人くんなのでよりリアリティがあるでしょうし、隼人くんが小栗判官の時は私がキーパーソンの役で出るのでその絡みも面白いと思います。
若手を育てる意味も込めて交互出演は必要だと思います。
「ロマンの病」というのが原作のテーマ。小栗判官は自分の理想を追求するために命を懸けて、周りの人のことなんてどうでもいい、自分がロマンを求め叶えることが大事だと思っているんです。でも次第に、周りの人の協力の大切さや、周りも幸せになってこそ真の幸せだということに気づいて学ぶ、青年期から大人への成長の物語なんです。それをよりはっきり出していこうとしています。原作の「ロマンの病」は理想の女性を求めるという内容だったんですが、今回は今さえ良ければいいという、より現代的で刹那的な生き方のことに変えてみようということで「新版」としました。照手姫との恋愛的な要素もありますが、いわゆる群像劇、それぞれが人生を背負っていて運命のしがらみの中で生きてくという感じにしたいです。誰かひとりをピックアップするのではなくて、全員を並列にして一人ひとりを立たせたいと思っています。
そもそもの古典の「小栗判官」は説教節になるので念仏踊りがテーマのひとつにもなるんです。歓喜、つまり喜びが踊りになって念仏踊りになるという解釈になるのですが、それを踏まえて最後は喜びの踊りで劇場中が喜びの渦に巻かれればいいかなと。そこでどういう仕掛けができるかというところですが、前作のスーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」の時にタンバリンを皆でたたいてもらったように、何か楽しいことができればと思います。皆に踊ってほしいですね。
劇場を出る時にとりあえず喜んで出て、とりあえず嬉しくなっちゃうような芝居、うれし泣きしてしまうような、幸せになるような芝居を作りたいですね。
演出には私の名前も入っていますが、基本的には杉原邦生くんにお任せするつもりです。いろいろと面白いことをやろうとしています。初演の「オグリ」の時にスーパー歌舞伎を創った伯父の猿翁は、映像を駆使した演出をしたかったらしいんですけど、当時は難しくてやれなかったんですが、新版では映像も使いたいと思っています。見せ場のひとつに地獄のシーンがありまして、地獄というと赤色のイメージが強いと思うんですけど、杉原くんからは白でやってみてもいいんじゃないかという意見も出ています。初演とは違うところを見せ場にしてもいいと思いますし、現代の世相に合った内容にできると面白いでしょうね。たとえば今ではSNSでいろんな情報が普及していて何が本当で嘘かわからなかったりするじゃないですか、そんなこともとり入れられればなと。より現代を反映して面白く出来るといいですね。
製作発表もやりますので、その時にもっと詳しくお話出来ればと思います。
【メイク】白石義人（ima.）
【スタイリスト】三島和也（Tatanca）
11月26日生まれ。東京都出身。
活動の場は歌舞伎だけでなく、栗山民也演出・井上ひさし作『雨』、前川知大作・演出『狭き門より入れ』をはじめ、映画『ザ・マジックアワー』『シャッフル』『天地明察』TVドラマ『龍馬伝』(NHK)『ブルドクター』(NTV)『JIN-仁-』(TBS)『寧々~おんな太閤記』(TX)等、数多くの作品に出演している。
◆スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『新版 オグリ』
平成3（1991）年に初演され、社会現象を巻き起こした市川猿翁による伝説のスーパー歌舞伎『オグリ』。
その創造の心を継承し、スーパー歌舞伎II（セカンド）を生み出した四代目市川猿之助の手によって、脚本、演出を新たに、『新版 オグリ』として、令和元年に初上演します。
中世から語り継がれる波瀾万丈の物語を、スーパー歌舞伎II（セカンド）らしい魅力と壮大なスケールで、市川猿之助・中村隼人の小栗判官役交互出演にてお届けします！
夢と浪漫、そしてスペクタクルあふれる超大作活劇にどうぞご期待ください!!