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ミュージカル『アリージャンス~忠誠~』濱田めぐみさん、海宝直人さん《インタビュー》

濱田めぐみさん・海宝直人さん_アップ

日系アメリカ人家族の実話を描いた感動のミュージカル『アリージャンス~忠誠~』。
「日系人である」というだけで強制収容所に入れられた家族の実話を元にして、ブロードウェイでミュージカル化された作品が今回日本で初上演されます。
そんなとてもデリケートなテーマを扱うこの作品で主役の日系人姉弟を演じるのが、濱田めぐみさんと海宝直人さん。
難しいテーマを演じることに対する意気込みや、コロナ禍で上演されることになった本作への想いなども語っていただきました。

ミュージカルの第一線で常にご活躍されているお二人が、がっつり共演されることはあまりないですが、姉と弟という関係での共演にあたってお互いの印象をお聞かせください。

濱田めぐみさん_全身

<濱田めぐみさん>
私事なんですが、役者仲間の中では福井晶一くんが一番付き合いが長いって話をしていたんです。
でもそれをうわまわる相手が出てきて。彼(海宝直人さん)が子供のころから知っているので、もう25年くらいになります。だからこの役でキャスティングを聞いて、思わずフッとなっちゃいました。「膝小僧すりむいていつも走り回ってた弟」みたいな歌詞があるんですが、もう昔の直人そのまんまです。裸足で駆け回って転んでたり、共演者の大人と喧嘩してたり。おりこうさんでしたけど色々な大人の楽屋に遊びに行って走りまくっていた直人を思い出して…そんなときから知っている間柄なんですよね。
『レ・ミゼラブル』のときにはもう成長して、「オッス」みたいな感じになってましたけど(笑)。『レ・ミゼラブル』はキャストも多く、なかなかお話できる機会がなかったので、そういう意味では今回の『アリージャンス』で20年ぶりにがっつり組むという感じなんです。でもあまりにも直人の小さい頃の印象が強すぎて、ストレスも何もなくお家にいる感覚ですね。その空気感で舞台に立てるというのは、家族を演じるにあたって最強だと思います。やりやすいを超えてドンピシャ!

<海宝直人さん>
ガキンチョの頃を知ってもらっているので、かっこつけようがなく、遠慮なくぶつかっていけるというか、受け止めてくださるというのも分かっているので、今回の共演が決まった時は嬉しかったです。

出演が決まったときの感想を伺えますか?

海宝直人さん_全身

<海宝直人さん>
作品の存在自体は知っていてとても興味はありました。出演のお話を聞いてこんなテーマの作品だったんだと知りました。
第二次世界大戦下のアメリカで起こった日系人強制収容の話ですが、自分はこの歴史について正直なにも知らなくて、どうして知らなかったんだろうと。色々調べていくなかで我々日本人にも関わりがあるんだと感じました。
この作品がブロードウェイで上演されたのもすごいことですし、今回日本で上演されることもすごく大きな意味があるなと…。
英語と日本語を織り交ぜた作品ですし、文化の違いもあって、非常に難しいなと思います。
演出家のスタフォード・アリマさんは今回日本版を作るにあたって、日本でやるからこそのオリジナルの演出を新しく作っていこうという想いを持っています。すごく大変だけど価値のある作品になるんじゃないかと思って、やらせていただこうという思いに至りました。

<濱田めぐみさん>
オファーをいただいたときは、正直この歴史についてあまり知識がなかったんです。ブロードウェイで上演していたこの作品のことは知っていたんですが、具体的な内容は企画書を見て初めてちゃんと知りました。
作品の内容をしっかり知ってから、自分の中で一度考えさせてほしいと言いました。
なぜかというとテーマがあまりにもデリケートで…。もちろん今まで人種差別を扱った作品はやってきたんですが、日系人差別という内容でアメリカで上演していたものを日本でやるということが非常に難しいなと。今までやってきた作品とは似て非なるものなので。見た目は日本人でも中身は完全にアメリカ人のサミー、ケイも本質的にはアメリカ人ですが、サミーと比べて母親から日本人の心を受け継いでいるようにも思えます。登場人物の間でも価値感の描写に細かい違いがあります。
この作品のお話をいただいた時は、アメリカや日本の情勢など含め、いつも通りの世界だったんですが、非常に迷いました。その時はこの作品を今日本でやるという意義があまり分からなかったんです。でもプロデューサーとお話をして、やるからには本気でやりますとお受けしました。
そして今年、今までとは全然違う世界になって、この作品のテーマである「自分とはなにか」「生きるとはなにか」にぶち当たり、「あ、これだ!」って。
そのひらめきとオファーされた時の気持ちが繋がって今に至ります。

そんな運命に導かれるようなタイミングでのこの舞台において何を大切にされますか。

<濱田めぐみさん>
何に忠誠を持ってあなたは生き抜くか…、今この瞬間だけでなく、人生において。自分の人生を生ききる上で突き通す信念というものを誰もが持っているのではないかと思います。
ケイという女性の生きざまを見ていただくことによってお客様になにか届けられるものがあるとすればやりがいがありますし、どれだけ睡眠時間を削ってでも価値のある課題だなと思います。

<海宝直人さん>
すごく複雑というか“日系”と言っても一世の方、二世の方、二世でも日本の精神文化というものを親から受け継いで持っている人もいれば、日本の精神性に影響は受けず心も完全にアメリカ人として育った日系人の方もいて、そういう違いはすごく繊細だと思うんです。
そういった部分は体の動きなどを含めて丁寧に構築していかないと物語を組み立てていくのは難しいだろうなと、演出のスタフォードさんともお話していて思いました。稽古の中で模索していかないとなと思います。日本に生きていて、自分が日本人だということを意識することって本当にないですが、ロンドンでお仕事させていただいたとき、舞台の世界でもオーストラリアから来ている人もいればヨーロッパから来ている人もいるという多民族の環境に身を置いて、自分って日本人でありアジア人なんだとすごく自覚し意識しました。
日本で生きていると民族的な意識とか世界の中の一員だということの意識がものすごく希薄になっているというか…。それを見つめなおすとても大きな機会になるんじゃないかな。改めてこのコロナの状況もあって、自分が世界の中の一員というような意識、視点を大事にもってこの作品に望まなくてはならないなと思っています。

日系人の人権を守るため徴兵反対をした立場のケイですが、彼女の家族への愛をどう思われ、またどう演じられますでしょうか?

濱田めぐみさん_アップ

<濱田めぐみさん>
弟サミーと恋人フランキーの立場が全く真逆のところへ進んでいきます。サミーはアメリカ兵として戦い、フランキーは家族を守るために権利を主張するという中でケイはすごく揺れている。
更にお父さんとおじいちゃんという存在がいて、その中できっと自分の立ち位置がわからないという状態になっているのではないかと思うんです。
自分以外のものに愛や優しさを全部配って、自分には何も残っていないという状態で収容所にいる。
そんな中で出会ったフランキーから自立するということを学び、初めて周りを見たときに、自分がしっかりしてないと人を助けることができないと気づく…。
今のところ彼女を俯瞰で見ることが中々難しくて。でもケイは母として、自分の身を投げだしてでも人を救いたい、許してあげたいという想いでいたんじゃないかなと思っています。そういう部分を舞台で見せられたらいいなと思います。

家族、日系人を守るためにアメリカに忠誠を誓い、戦地に赴くサムですが彼の家族への愛をどう思われ、どう演じられますでしょうか?

海宝直人さん_アップ

<海宝直人さん>
彼は母を自分が生まれる時に失くしていて、ある意味日本のメンタリティーをほとんどもっていないキャラクターだと思っています。
とにかく彼にとって男とはどうあるべきなのかということがすごく大きなテーマになっていると思う。
ソロナンバーの中でも「国の戦いのために忠誠を尽くすことが男なんだ」という歌詞があったんです。
ベトナム戦争の勉強をしていた時も、彼らにとって国のために尽くして戦うということが自分の家族や愛する人々を守るということだと学びました。
今を生きる日本人にとっては国を守り愛するという気持ちは希薄なんじゃないかと。そういう意味では僕自身もしっかり理解して自分の中に踏み落としていくという作業を丁寧にやっていかなきゃなと思うんです。
サミーはアメリカ兵ですけど、家族を守るため、愛する者のために戦っていた。そこを今はまだ実感を持って理解出来てはいないんですが、丁寧に理解して掘り下げて勉強することでしっかり演じられたらなと思います。
彼を突き動かしているのは家族への愛ですが、家族だけではなく日系人みんなを守りたいという思いを持っている。
英語の歌詞では、彼の主語は「WE(私たち)」なんですね。「ヒーローになるんだ」という歌詞でも「WE」という表現を使って「僕たちはヒーローになるんだ」と表現しているんです。
彼の中ではこういう状況を受けている日系人も皆ファミリーだったと思うんですけど、その彼の想いを日本語では言葉的にそこまで歌詞には入れられないかもしれない。でも、そういうものはすごく大事に表現していかなければと思っています。

2020年はコロナの影響もあって3月頃から沢山の作品が中止になり色々な想いをされたと思いますが、『アリージャンス』が上演されるのがちょうど約1年後の2021年3月です。どんな想いで舞台に立ちたいですか?

<濱田めぐみさん>
今年3月いっぱいまでは舞台をできていたのに、コロナでパタッとなくなって、それから1年後にこの作品をやるのは、もう一度自分というものは何かと立ちかえって考えるきっかけになると思います。
この作品を通して世界に目が向いて、多民族ではない国に住んでいる自分の感覚と、多民族の中に投げ入れられた自分というのをやっぱり想像するわけです。そうすると世界の中での日本、日本人というものを客観的に理解しようと考えるんです。
これからの世界って、色々なことがあって今までの生活が全部覆されて、何がどうなるかわからないじゃないですか。その中においてこの作品が、自分というものの立ち位置を目をそらさずに見つめなおしたり、自分の今までの人生とかルーツを振り返ったりするきっかけになるような気がして…。
それがすごく良い影響をもたらすといいなと思っています。

<海宝直人さん>
今、世界では分断というものすごく大きなテーマがあると思うんですが、日本に住んでいるとそれにもあまり実感が沸かないというか…。
コロナ禍で欧米ではアジア人がバスに乗っているだけで罵倒されたり殴られたりするような差別も起きているけれど、日本にいてそのニュースを見ても、想像はできてもなかなか実感はしづらい。
こういったタイミングでこの作品ができることって改めて大きいなって思っています。この作品を見ることで改めて肌で感じてもらえるようなことがあると思います。
実際僕も知らない物語だったし、そういう意味では自分たちも深く追及して物語を深めていく中で得るものがものすごく沢山あると思いますし、それをお客様に見ていただいて色々な事を感じていただけたら嬉しい。タイミング的にはものすごく巡り合わせを感じるなと思いました。

濱田めぐみさん・海宝直人さん_全身