ミュージカル
『ゴヤ-GOYA-』
スペイン最大の画家ゴヤの激動の半生を、今井翼で描くオリジナルミュージカル!
イントロダクション
フランス革命・ナポレオン戦争の激動の時代。人生半ばで聴力を失いながらも《黒い絵》と通称される14枚の絵や「裸のマハ」などの傑作を生みだしたスペイン最大の画家フランシスコ・デ・ゴヤ。 画家人生だけでなく“人間ゴヤ”の波乱万丈な生き様や、混沌とした社会の中でいかにして芸術家となっていったのか、生きる力に満ちたエネルギー溢れるオリジナルミュージカルが、ここに誕生します!
主演をつとめるのは本作で復帰後“初主演”を果たす今井翼、更にピアニストの清塚信也が本作でミュージカルの作曲・音楽監督に初挑戦します。
そんな、ミュージカル『ゴヤ-GOYA-』の制作発表が、2021年3/10(水)に都内にて行われました。主演の今井翼はじめ、小西遼生、清水くるみのほか、G2(原案・脚本・作詞)、鈴木裕美(演出)、清塚信也(作曲・音楽監督)が登壇し、意気込みを語りました。
ストーリー
封建的なスペイン社会において、破天荒かつ進歩的な考えをもっていたフランシスコ・デ・ゴヤ(今井翼)。ひときわ野心の強いゴヤは、保守的なアカデミー会員である義兄バイユー(天宮良)とことごとく対立するが、宮廷画家になるために王妃マリア(キムラ緑子)やその側近のテバ伯爵(山路和弘)に近づき権力を利用するなど、あの手この手で出世を目論んでいた。そんな彼を心配し支えるのは、妻のホセーファ(清水くるみ)や同郷の親友であるサパテール(小西遼生)。だが、その助言には耳を傾けず、ゴヤは自分の信じた道を突き進んでいく・・・。
そして写実的なヌードである「裸のマハ」を描いたことで、保守的なスペイン画壇でスキャンダルを巻き起こし、さらに革命軍との接触を画策する宰相ゴドイ(塩田康平)の命により、使者として港町カディスに向かう途中、何者かに毒を盛られ、聴力を失ってしまう……。
自暴自棄となり絵が描けなくなるゴヤだったが、資産家・アルバ公爵夫人(仙名彩世)との再会により、絵を描くことへの衝動を取り戻すきっかけを掴む……。
記者会見レポート
G2(原案・脚本・作詞) 私とゴヤとの出会いは小学生の頃、家にあった百科事典でした。それから8年前に、彼の人生を知る機会がありました。ゴッホのようなピュアなアーティストではなく、戦う画家であり、スペインの動乱の時代の中で耳が聞こえなくなったり、ナポレオンに襲われたりする中で変動していく姿に魅せられました。この人の中で何が起きたのかを知りたくて描きたいと思いました。ようやく本も上がったので、あとは鈴木裕美率いるとても優秀な寮長に子どもを預けたような気持ちです。稽古の映像を見て、とてもエネルギッシュで生き生きとしたザラザラとしたミュージカルになるような予感がしております。
鈴木裕美(演出/以下、鈴木) G2さんから「僕が演出はしたいんだけど、忙しいのでやって」と言われて非常に光栄ながらやらせていただくこととなりました。私を呼んでくださったのがG2さんで、私が清塚さんに来てと言ってこのカンパニーが成立しています。この作品はまったくのゼロから創っているミュージカルなので、きっとみなさんがご想像のつかない作品になると思います。もちろん大変ではありますが、ゼロから創る喜びを味わっています。打ち合わせの段階からワクワクするようなモノを創る喜びにあふれた稽古場になっているので、楽しみにしていただければと思います。
清塚信也(作曲・音楽監督/以下、清塚) 見ての通りの音楽家でございます。またの名をおしゃべりピアニストと最近はよく言われるので、あまりしゃべりすぎないようにしたいなと思うのですが、まずはこんなに芸術的なアーティスティックな時間を過ごせていることに心から感謝です。(鈴木)裕美さんG2さんと3人で土台を、コロナ禍という中リモートも使いネットも駆使してやりましたが、時間を忘れる一日中でもしゃべっていられるような楽しいアーティスティックな話ができて、いろんなことを気にせず集中して作品を生み出させていただきました。そこにキャストのみなさんが入ってきて、今井翼さんのエキスパートなすごいスキル、(小西)遼生さんも(清水)くるみさんもものすごいタレント性をお持ちで、誰も迷いがないという揺るぎないものを持ち寄ってできているエキスパートが集まったエンタメだと思っております。
今井翼(以下、今井) 日本の次に愛するスペインを舞台に世界を代表するゴヤを演じられることを本当にありがたく思っております。僕自身も病を経験し、おかげさまで今を迎えられる喜びを感じておりますが、紆余曲折したゴヤの人生を丁寧かつ大胆にまた熱くエネルギッシュに演じていきたいと思います。
小西遼生(以下、小西) 僕が演じるサパテールは史実にも残っているゴヤの本当の親友です。ゴヤとは手紙でやりとりするシーンが本作では多くて、実際の歴史の中にもサパテールとゴヤの手紙のやり取りが残っています。ゴヤからサパテールに宛てた手紙がラブレターのような「君がいればあとは何もいらない」という文章が書かれていて、絵を描くことに貪欲な人間がこんなことを言ってしまう熱い想いを語ってもらう役です。僕も今井翼さんとほぼ同世代で、稽古の中でこれから親友という言葉を超えた、見ようによっては危険な関係というか、心と心の通ったそんな役を創っていければと思います。ぜひ楽しみにしていてください。
清水くるみ(以下、清水) ホセーファはこのお二人(今井翼、小西遼生)の関係性の愛情が強いあまりに、あまり愛されていない妻ですが、けなげに支えるという役です。本日衣裳を着てみてインスピレーションをいただいたのでもう1ヵ月稽古を頑張っていきたいなと思います。
日本ミュージカル至上初のゴヤを題材とした本作に、出演が決まった際の気持ちは?
今井 お話をいただいた時はすごく嬉しかったです。これまでスペインとのさまざまなご縁をいただいておりまして、フラメンコが繋いでくれた今回の新たなる出会いを大事にしていきたいと思いました。お陰様で昨年活動を復帰させていただきまして、今回こういった大役をいただきましたので、本当に感謝をして、今このような時に舞台に立てる喜びを噛みしめてしっかりやっていきたいと思います。
小西 僕個人としてはG2さん、裕美さんのお2人とは以前も作品をやらせていただいていて、演劇愛が強いお2人がタッグを組んで何かモノを創ることに参加させていただけるのが嬉しかったです。そこに今や話題沸騰の清塚さんが本気でミュージカルを創るという初めての舞台に参加させていただける喜びもあります。世代としては、翼くんはずっと見ていたスターなので、今回は「コニツバ」と呼ばれるように頑張りたいと思います。
清水 初めて日生劇場に立たせていただくのですが、初めての日生劇場でこんな大役をいただいて大丈夫なのかなと、最初は間違いかなとビックリしました。ご一緒していいものかという素晴らしい方々に囲まれていて今もちょっと緊張しているんですけど、その中で足を引っ張らないように頑張らなきゃなという気持ちです。
フラメンコを活かせそうなシーンがあるのか?スペインに対するイメージ、知識などどのように舞台に投影していきたいか?
今井 まさに芝居から派生したフラメンコを今回踊らせていただきます。15年近く支えてくださっている僕のフラメンコの師匠・佐藤(浩希)先生も制作・出演なさるので、そういう面でも心強く思っています。フラメンコというのは、怒り喜び悲しみといったものが体の芯から湧き上がってくる1つの…ダンスではなく、舞踊なんですよね。まさにゴヤは青年時代すごくほとばしった野心を持っていて、そういった思いをうまく連動させていきたいと思っています。本来であればこの作品の準備期間を迎える前にスペインに行って、ゴヤやスペインのことを感じて準備に取り掛かりたいと思っていましたが、世界中が大変な状況を迎えていますので、僕自身がこれまでスペインで経験してきたことを今一度振り返りながら、しっかりと匂いや空気感を表現していきたいと思います。
来てくださった一人ひとりにゴヤのエネルギーをフラメンコだけでなく作品を通して感じていただきたいです。何より今回は清塚さんが作曲してくださるので、清塚さんが描く世界観、スペインに寄り添った音楽が見どころになっているので型にはまらない作品を楽しみにしていただければと思います。
ゴヤのイメージとゴヤとの出会い、ゴヤとの共通点があれば
今井 スペインに行くとプラド美術館に行くんですが、特にダリが好きで日常の中でも僕の家のトイレはダリの作品だらけで、通称ダリ便と(笑)。ゴヤのことは造詣深かったわけではなかったですが、こういった機会をいただいて自分なりに資料など読んで勉強をして、“我が道を行く熱き魂”というものに共感を持ちました。自分なりに年表を作って、彼がどうやって生きていたのか、彼が求めていたものを手にした末に迎える苦難の道の中で、簡単には這い上がれないけれども、見えなくなったものが出来てしまった分、彼には見えるものがあって、彼にしかない感性というものを大事にしていきたいと思いました。ゴヤが残していったものを今僕が表現できるというのはこんなにもありがたいことなので敬意を表して大胆にアツくいきたいと思います。
鈴木裕美さん(演出)は今井翼のゴヤをいまどう見ているのか?
鈴木 ミュージカルの主人公をなさる方は比較的に声の高い方が多いんですけど、彼は声がとても魅力的でゴヤにすごく合うなと最初にお話したときに思いました。エネルギッシュであるというところと、ゴヤという人が社会や世界へ向ける視線の中には怒りが大きなパーセンテージで含まれていて、怒りだけではなくもちろん慈しみとかそういう気持ちもあるんだけども、怒りを感じる絵が相当多いんです。私の個人的な感想としては、今井翼さんも相当怒りという感情を持ってらっしゃる方だなと思うので、そこがとても合う、すごく合うという風に思っています。
稽古場の様子は?
今井 稽古期間が約1か月半なんですが、鈴木さんが緻密にアドバイスをくださるので自分なりに解釈から咀嚼してやっています。ゴヤというと晩年の作品のモノクロームな印象があると思いますが、今回は芸術家ではなく人間ゴヤに焦点を当てた作品なので、コミカルなシーンもあります。そして彼の人間味溢れる熱い部分と、うねるような彼の人生と同じようなストーリー展開になっていて、こんなにもコミカルなお芝居は初めてなので稽古が楽しいです。とにかくベストを尽くして、お客様に喜びを感じていただきたいです。いい作品に出会ったあと、劇場を出たあとの気持ちって何とも形容し難い喜びがあるんですよね。そんなエンターテインメントの力を信じているのでお客様にもご期待いただきたいと思っています。
先ほど鈴木さんが今井さんの声をほめた時に清塚さんが深く頷いていましたが、清塚さんから見た今井さんの印象は?
清塚 本当に、いわゆる以前の歌から連想する声より、低い音がしっかり出ていて、日本人で主役を張る方で低い声のレンジが出る方はそんなにいないので、ゴヤにぴったりだし音楽的にも幅が広がるなと、とてもときめいたのを覚えています。今井さんの謙虚な部分と、意志の強い部分と、…ほどよく鈍感な部分と(笑)、すごくかわいらしい部分といった様々な面が、このゴヤという作品で出るのではないかと思っております。
今井 本当に鈍感なんです。よくいえばマイペースです。よろしくお願いします(笑)
この作品で「画家」と「フラメンコ」を表現することについて、どう感じましたか?
今井 ミュージカルというひとつの枠なので踊ることは想定していました。フラメンコだけでなく、僕の中でのダンスの起源でもあるジャズの要素もあります。20代半ばで自発的に始めたフラメンコを芝居の中で表現できることは嬉しいです。
「コニツバ」結成ということですが、何かエピソードなどありますか?
今井 まあ、言わなくても伝わるかなと思うんですが(笑)すごく寄り添ってくださる方で、同年代ですし、小西さんの方から話しかけてくださるのですごくリラックスできます。
もちろん芝居を超えた親友という関係になっていきたいですけど、でも、それを超える僕の盟友はしっかりと“ここ”(胸に手を当てる)にいますので、頑張ります。
小西 今は距離感に敏感な時期なので稽古もやりづらい部分あるんですけど、今井さんはいい意味でノーディスタンスというか、飛び込んできてくれるので喜びがありました。鈴木さんからも2人の関係性の大切さについて話していたので、残りの稽古時間で人生のパートナーとなれるよう頑張りたいと思います。
最後に一言
今井 このような役をいただいてありがたく思っています。今大変な状況の中、表現者として舞台に立てる喜びを日々噛みしめています。ゴヤが激動の時代の中、そして病を患った中、どう時代と向き合い、どう希望に向かっていったかは、時代を超えて人に訴えかけるプラスのエネルギーがあると思うので、少しでもお客様が楽しんでくださり、ストレスがかかるこの世の中にそのプラスのエネルギーをお客様と分かち合えたら嬉しく思います。