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■スペクタクルリーディング『バイオーム』制作発表レポート

梅田芸術劇場_バイオーム_450

スペクタクルリーディング
バイオーム BIOME
五感を揺さぶる朗読劇

はじめにINTRODUCTION

中村勘九郎主演!
演劇界を牽引する俳優達と初タッグ!
宝塚歌劇団で心に残る名作を手掛けてきた上田久美子による書下ろし戯曲
「麒麟がくる」「精霊の守り人」の一色隆司演出

今回は4月下旬に都内で行われたスペクタクルリーディング『バイオーム』の制作発表記者会見の様子をお届けします。
“スペクタクルリーディング”と名づけられた本作は、通常の朗読劇では感じられない五感を揺さぶるような、ある種の浮遊感を感じるような、新しい概念の演劇とのこと。
会見では上田久美子さん(作)、一色隆司さん(演出)、中村勘九郎さん、花總まりさん、古川雄大さん、野添義弘さん、安藤聖さん、成河さん、麻実れいさんが登壇し、それぞれ今作への想いや意気込みを語ってくださいました。

あらすじSTORY

わたしをけものと呼ぶのは誰か
わたしをにんげんと呼ぶのは誰か
それは事実か真実か虚構か嘘か、庭先に語られる一つも美しくない物語

その家の男の子はいつも夜の庭に抜け出し、大きなクロマツの下で待っていた。フクロウの声を聴くために…。
男の子ルイの父に家族を顧みるいとまはなく、心のバランスを欠いた母は怪しげなセラピーに逃避して、息子の問題行動の奥深くにある何かには気づかない。
政治家一族の家長としてルイを抑圧する祖父、いわくありげな老家政婦、その息子の庭師。
力を持つことに腐心する人間たちの様々な思惑がうずまく庭で、古いクロマツの樹下に、ルイは聴く。
悩み続ける人間たちの恐ろしい声とそれを見下ろす木々や鳥の、もう一つの話し声を…。

制作発表レポートREPORT

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最初に一言ずつお願いします。

上田久美子/作今回、宝塚歌劇以外の台本を初めて書かせていただきました。今の社会や世界から自分が受け取ったもの、なにか自分を通して出てくるものを即興的に形にするというのを1回試したいなと思って書かせていただきました。 それが植物たちの世界と人間の世界が二層に関わっているという、ちょっと不思議な作品になってしまいました。この挑戦の機会に、素敵な作品に仕上がることを期待しています。

一色隆司/演出 とてつもない台本を上田先生からいただいてどうしようと思いました。先生といろいろお話する中で、本当に奥が深くてスケール感があって、人物造形もすごくしっかりしていると感じました。人間のドラマ、大地や自然、地球を感じるような壮大なものもそこにある。そして、本当に素晴らしいキャストの皆様に集まっていただけて、もうワクワクドキドキです。前を見て、皆様に何かお届けできるかという期待感と高揚感でいっぱいでございます。

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上田久美子さん/作
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一色隆司さん/演出

中村勘九郎/ルイ・ケイ役 上田さん作、そして一色さん演出のもと、本当にこんな豪華な皆様とご一緒できるというだけで幸せです。いい作品を皆様に届けられたら幸せに思います。

花總まり/怜子・クロマツの芽役今回、私にとって新たなチャレンジになりそうな舞台ですので、非常にワクワクしつつ、少し緊張もしております。一生懸命頑張りたいと思います。

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中村勘九郎さん/ルイ・ケイ役
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花總まりさん/怜子・クロマツの芽役

古川雄大/野口・一重の薔薇役スペクタクルリーディングという新しい挑戦の機会に参加できて、本当に幸せに思っております。そして、上田さん、一色さんという素晴らしいタッグ、素晴らしいキャストの皆様とご一緒できる、こんなに刺激的な機会はないと思っております。作品も楽しみです。

野添義弘/克人・クロマツの盆栽役恐らく本当に五感を揺さぶる、今までに観たことのないような舞台になると思っています。自分もすごく楽しみにしておりますし、今いらっしゃる皆様と今回ご一緒できること、本当に幸せに思います。ぜひ劇場で、観たことがない舞台を一緒に体験していただきたいなと思っております。

安藤聖/ともえ・竜胆役とても豪華な皆様とご一緒できて、大変光栄に思っております。

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古川雄大さん/野口・一重の薔薇役
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野添義弘さん/克人・クロマツの盆栽役
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安藤聖さん/ともえ・竜胆役

成河/学・セコイア役スペクタクルリーディングって、何?と皆様思っていると思うのですが、まだ誰も分からないです(笑)。今日こうやって共演者の皆様と一堂に会するのは初めてですので、僕は目配せしながら「(台詞を)覚えませんか」という係をやっております(笑)。楽しみにお待ちください。

麻実れい/ふき・クロマツ役 皆様とご一緒に楽しく、そして考えながら、先はまだ全く見えませんけれど、これだけのメンバーが集まれば、無限大にいろんなアイディアが出て、素敵な作品に仕上がると思いますので、お楽しみくださいませ。

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成河さん/学・セコイア役
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麻実れいさん/ふき・クロマツ役

スペクタクルリーディングということですが、ただの朗読劇と違うのは、どのような点でしょうか。

一色隆司 朗読劇って、本を開いて読み聞かせる、お母さんが子どもに語るようなイメージですよね。この台本はそんなところでは収まらなくて、本を開くとその世界が目の前にどんどん広がっていくんです。きっと観てくださった方は、自分がストレートにキャラクターなったり、また木々になったり、気づいてみたらそれらを見下ろしている天空の上にいる何かになってみたり。劇中の空気が最初とまったく違うように感じていただけるのではと思います。さらに自分が地球や宇宙の中で、たったひとつの原子のような構成要素のひとつなんだなと思えるような、ある種の浮遊感を感じていただけるような作品にしたいと思っております。それが実現したときには、きっと皆様は今までの朗読劇では感じられなかったような思いを心に宿しながら、劇場を後にしていただけるだろう、それがスペクタクルリーディングと名付けたポイントでございます。

(上田さんへ)ご自身が書かれたものを他の方が演出するのは初めてですよね。どのようなお気持ちですか。

上田久美子はい。すごくワクワクしています。一色さんが「こういう風にしようかな」とか語ってくださっていることが、自分の考え以上に他の人の考えが加わって世界が広がっていくという体験は今までさせていただいたことがなかったので、とても楽しみにしております。

ご自身が演じられる役どころ、そして2役を演じるにあたっての、現時点での演技プランを教えてください。

中村勘九郎 私はルイとケイという人間です。人間と植物がやりたかったなと思います(笑)。本を読んでいてもとても楽しいですし、そしてルイとケイは8歳の男の子と女の子なんですが、40歳の私が演じるとどうなるのかなという不安しかないですね…。本当にあの遠い昔に置き忘れてしまった純粋な心を本番までに取り戻して演じたいなと思います。

花總まり 私はルイの母親の怜子と、クロマツの芽の2役をさせていただきます。人間と植物の2役というのはもちろん初めてのことですし、怜子をやるから、そのクロマツの芽の役の意味があり、2つの役の関連性というのも絶対大切だと思うので、素晴らしいキャストの方々とコミュニケーションをとりながら、この作品の中で自分が果たすべき役割をきちんと把握して作っていきたいと、今は漠然とそういう風に考えています。

麻実れい 与えられた場所で淡々と堂々と根を張って生きるクロマツ。そしてそのクロマツとは対照的な家政婦ふき。どちらかといえば植物の方はおだやかな感じで、ふきの方は緊張感を感じながら演じたいなと思っています。両方ともとても素敵なお役で、特に植物の世界はかわいくてコミカルなところがたくさんあります。これから頑張って色々な表現をしたいなと思っています。

古川雄大 僕は庭師の野口という役とイングリッシュローズの2役をやらせていただきます。庭師の野口は、家政婦ふきの息子で、先代から続く庭師を継いでいる男です。割と謎めいた人物だと思うのですが、彼も葛藤を抱えていて、物語に大きく関わってくる重要な役だと思っております。そして、イングリッシュローズ。そうですね、今のところマダム風の口調というヒントをいただいておりますので、いろんな参考資料を見て、習得して、披露したいと思います(笑)。

成河 僕がやらせていただく役は学という婿養子と、セコイアです。学の方は、勘九郎さんとは親子、花總さんとは夫婦というなかなかハードルが高い役でもあります。政治家一族の物語が核にあるんですけど、そこに婿養子としてやってきて、彼本人に血筋はないけど、非常に優秀で、努力でその家に入ってきた人物で、いろいろなストレスや葛藤を抱えている役どころです。夫婦がかなり生々しい部分を担当しているので、どこまで攻めていけるかなと思っています。
セコイアの木は、西洋種の木ですね。政治家一族の庭園にはまず大きなクロマツがあります。そこに政治家の趣味でもあり、ひとつの威厳の象徴でもあり、いろんな木を植林していきます。すると日本古来の植物と西洋の植物が混じってよく分からない庭園になってしまう。そういうのが戯曲にとってとても大事なテーマになっているので、植物として何を見守ってきて、どういう心持ちで、何を見てきたのか考えるのがとても楽しみです。

野添義弘私は一族の家長の克人と、クロマツの盆栽をやらせていただきます。克人は本当に一見厳しくてすごく冷酷なような感じの人に見えるのですが、実はそうじゃないというところを表現できればと思います。 クロマツの盆栽は、台本に書いてある通り、ちょっと愉快な何か庶民派のおっさんみたいな感じ。人間と植物なのですがすごく対照的で、ひとつは感覚的、もう片方は論理的な感じに思えましたので、その辺の違いを見せていけたらと思います。

安藤聖 花療法士ともえと、リンドウを演じさせていただきます。ともえは台本を読み進めていく中で、この作品の中ではきっと一番庶民的で地に足がついていて、何より幸せについて知っている人だなと私は感じました。私は普段、双子を育てる母でもあるのですが、シングルマザーであるともえと同じような感情を抱くことが日々の生活の中であるので、そのあたりを表現できたらいいなと思っています。
リンドウについては、植物を演じたことがないので、どういった役作りをしていけばいいのかなと考えた時に、花言葉を検索してみたら「正義」という言葉がありました。その正義はともえにもリンドウにも共通する部分だなと思いましたので、そこを2役の共通項として、楽しんで演じられたらいいなと思っております。

(勘九郎さんへ)ちなみに植物だったら何を演じたいですか?

中村勘九郎やっぱりクロマツは格好いいですね。威厳があって堂々としていて。

台本を読まれた第一印象を教えてください。

中村勘九郎 先ほど成河さんがおっしゃった通り、本当にヒリヒリするような本でございます。今、分かりやすいものや、簡単なもの、見やすいものというのが良しとされているような世の中に、本当にパンチを与えるような作品だなと思いました。植物とか大地とか地球とか、難しいかなと思うのですが、お説教臭くなく、観に来てくださったお客様が何かを持ち帰っていいただけるような、何かを感じ取っていただけるような本だなと思いました。

花總まり膨大なセリフの量で、ただの朗読劇ではなくて、ものすごいドラマが込められていると思いました。人間と植物の世界が怖いぐらいに合わさってできている本なので、これまで観たことのないような面白いものだと思います。

麻実れい初めにこの台本を見た時に「おっ、難しいな」と思いました。でも、何度も繰り返し読んでいくと、非常に噛みごたえがあって、逆に面白く、どうなるのだろうという期待感が膨らんできています。

古川雄大目の前にメリーゴーランドがあるなと思って乗ってみたら、気づいたらジェットコースターになっている。乗り終わったあとには心を鷲掴みにされていて、もう1回乗りたいと思ってしまう、そんな本でした。伝わりますかね(笑)。

成河 本当に直球で、日本、あるいは戦後の日本社会への怒りのようなものも感じましたし、逆に希望のようなものを感じました。ご自分のファンタジーの中に閉じこもっているだけではなくて、社会全体を上田さんの目線でざっと貫く大きな核があり、筆をばんっと叩きつけるようなエネルギーをとてつもなく感じました。素敵だなと思います。

野添義弘 最初はどうするの?と思いました(笑)。本当に想像がつかなくて、映像だったらできるんだけど、舞台でどうするのかという気持ちになりました。でも、観ていくとどんどん引き込まれて、分かりやすい作品になるかなと思います。台本の中のメッセージも分かりやすいですし、キャストの皆様が言われているように、観た方が持って帰れるものがたくさんあると思いますので、とても楽しみな作品だと思います。

安藤聖台本を読み始めたときには、まるで絵本を読んでいるかのような感覚がありました。そのうちに「お、憎悪劇が始まったぞ」「次はファンタジーか」「そして悲劇か」といろいろな要素が詰まっていて本当に楽しく読みました。

(勘九郎さんへ)歌舞伎以外のお仕事をされる際に楽しみにされていることや心がけていることがあれば教えてください。

中村勘九郎やっぱり出会いですね。歌舞伎の世界は稽古も4、5日しかありません。今回もそんなに長くはないのですが、じっくり皆様と話し合って、ひとつの作品を作り上げていくのを楽しみにしています。

今回、初顔合わせということですが第一印象をお教えいただけますでしょうか。

中村勘九郎私は人見知りが激しいタイプです(笑)。でも先ほど少しおしゃべりをさせていただいて、何かスッと入れるようなところがありました。あとは『もう(台詞は)覚えたでしょう』とか、足の引っ張りあいが始まっているので、楽しく稽古ができるかなと思いますね(笑)。

プレッシャーをかけているのはどなたですか。

中村勘九郎成河さんをはじめとして、野添さんもなかなか、ね(笑)。

両隣には宝塚歌劇ご出身の方がおりますが。

中村勘九郎ホントですよ。お二人とご一緒できるなんて。歌舞伎は男だけの世界ですから臭いんですよ(笑)。本当に楽しみです。

花總さんや麻実さんからみて、勘九郎さんの印象はいかがですか。

麻実れい武道館での舞台を拝見しまして、その時の赤い衣装で舞われていた姿がとても印象的でした。すごい方が出てきたのだなと思いましたね。その後も舞台を拝見していますけど、こうやってご一緒できることはとても嬉しいです。勘九郎さんからいただけるものはいっぱいいただいて頑張っていきたいと思います。

花總まり舞台を拝見させていただいて、いつもすごいエネルギーと膨大な量の台詞を言っているイメージがあります。先ほど人見知りとおっしゃっていましたがそんな風には思えませんので、稽古場でたくさんお勉強させていただきたいと思っています。

(上田さんと一色さんへ)今回、なぜ朗読劇にしようと思われたんでしょうか。

上田久美子 最初から朗読劇で進めることで話がまとまっていました。もとから植物の世界を書きたいというのがありました。植物というのはあまり自分というものがはっきりとなくて、植物と植物との意識がある程度共有されているものであり、ひたすらそこで起きていることを受け取っている存在だと思っています。だから「あの大きな生き物は立ち上がった」とか感じたことを口にすることが多いんですけど、そういうある種ト書きみたいなことを言ってくれるんです。朗読劇だからあまりト書きを読んだら無粋かなと思っていたので、植物たちにト書きを担ってもらえることもできるし、ちょうどいいなというところから書き始めたところでした。今はけっこうスペクタクルになっていて楽しみにしています。

一色隆司 朗読劇をやりましょうというところから始まったのですが、上田先生とお会いした時に長時間お話をして、波長が合った感じがしました。それから数か月後にいただいた台本を拝見して、えっとなりました(笑)。とてつもないスケール感があったので。朗読劇のつもりだったのが気づいたら朗読劇じゃなくなっていて、そこがスペクタクルリーディングの根幹かなと思います。朗読劇ですが朗読劇じゃなくなっていて、演劇の世界を飛び越えて普遍的で大きな世界の話になっている。でもキャストの皆様の力をお借りして一緒に作っていけると思うと光が見えてきました。

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