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■ミュージカル『ファインディング・ ネバーランド』山崎育三郎さんインタビュー


ミュージカル
ファインディング・
ネバーランド

はじめにINTRODUCTION

ブロードウェイでも絶賛された人気作が、新演出版で上演!

ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』は、アラン・ニーによる戯曲『The Man Who Was Peter Pan』と、ジョニー・デップ主演で2004年(日本では2005年)に公開された同タイトルの映画(邦題「ネバーランド」)を元に創られたミュージカル作品。

映画はアカデミー賞7部門にノミネート・作曲賞を受賞、ミュージカル版は2015年にブロードウェイで開幕し、多数メディアから「何年も心に残るであろう必見の舞台」と絶賛された人気作だ。

物語の主人公は、名作『ピーターパン』の作者である劇作家ジェームス・バリ。スランプから抜け出せないバリが、ある家族に出会い、子供たちとの出逢いを通じて物語を書き上げ、劇場で『ピーターパン』を上演するまでを描いた、実話に基づくストーリー。大人になってしまった誰もが、遊び心を取り戻し、夢見ることを思い出すことができる感動の物語。

2017年には東急シアターオーブにてツアー版招聘公演が上演され、大好評のうちに幕を閉じた。

音楽を手掛けるのは、イギリスの人気ポップスグループ「テイク・ザット」のゲイリー・バーロウと、グラミー賞受賞作曲家でシンガー・ソングライターのエリオット・ケネディ。心を虜にする楽曲、ほのぼのとした笑いと愛の物語が詰め込まれた、どんな世代でも楽しめるブロードウェイの人気作の新演出バージョンに期待が高まる。

あらすじSTORY

19世紀後半のイギリス。新作戯曲が書けずに行き詰まっていた劇作家ジェームズ・バリ(山崎育三郎)は、公園で、未亡人シルヴィア(濱田めぐみ)と4人の子ども達ジョージ、ジャック、ピーター、マイケルと出逢う。

妻のメアリー(夢咲ねね)からも問い詰められ悩んでいたバリだったが、彼らと遊ぶうちに純粋で正直な気持ちを思い出し、「演劇」も「遊び」も同じ「PLAY」なのだと気がつき、物語をどんどん生み出していく。

しかし、当時のイギリスでは、演劇は上流階級だけのもので、バリが「子供も楽しめるファンタジー作品を上演したい」と提案すると、劇場主のフローマン(武田真治)と劇団員たちは猛反対。

一方、父を亡くしてから純粋な心を閉ざし”大人”になろうとしていた三男のピーターは、バリと交流を深めるうちに、夢や希望を捨てることが大人になることではないのだと悟る。バリとシルヴィアは、シルヴィアの母のデュ・モーリエ夫人(杜けあき)に反対されながらも交流を深め、お互いを理解し心を開く関係になっていく。こうしてバリは、シルヴィアと子供たちと一緒に空想した世界を基に『ピーターパン』の物語を作りあげていく。

最初は反対していた劇団員たちも、次第に子供の頃の純粋な気持ちを思い出し、バリの描く世界に引き込まれていく。順風満帆かに思えたが、シルヴィアの体調が悪化し、バリと兄弟たちは新たな試練に直面することになる。そして迎えた新作舞台『ピーターパン』の公演初日。

『ピーターパン』という永遠の物語を生み出した一人の作家と、彼を囲む人々の、美しく、優しく、切ない、感動の物語。

インタビューINTERVIEW

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俳優 山崎育三郎さん

ブロードウェイ版をご覧になっているとのことですが、作品に対して、どんな印象をお持ちでしたか。

とにかく泣けました。僕はあまり舞台を観て泣くことがなく、普段の生活からして最後に泣いたのはいつだっけ、というくらいなのですが、その僕が涙を流したということだけでとても記憶に残っています。それだけ作品に入り込んで観ていたんだと思います。

この作品のどこがそんなに響いたのでしょう。

僕は、一番価値があるものは“子ども心”だといつも思っているんです。ウォルト・ディズニーも「われわれの一番大きい資源は、子どもの心である」と言っていますが、それは僕が生きていく上で常に心の中に持っていること。その精神がこの作品の中にはあって、だからぐぐっと入り込んでワクワクしながら観てしまったんだと思います。僕自身、デビューした12歳当時の感覚をずっと忘れないで物事に挑む姿勢を大事にしたいと思っていますので。

では今回、出演の決め手となった一番は作品の良さということでしょうか。

そうですね、一番は作品、物語の良さ。そして音楽。ヒットするミュージカルの絶対的な条件として音楽の良さがありますが、『ファインディング・ネバーランド』も音楽がとにかく良いです。観終わった後に印象的なメロディラインが頭に残って「歌いたい!」と思いました。ピーターと二人で歌う曲(When Your Feet Don’t Touch the Ground)もすごくグッときますし、めぐさん(シルヴィア役の濱田めぐみ)と歌う「What you mean to me」もとても綺麗。とにかく名曲ぞろいというのは大きな決め手でしたね。

まだお稽古に入る前かとは思いますが、現時点で演じるジェームズ・バリはどういう人物だと思っていますか?『ピーターパン』を生み出した作家ですが……。

子どもではないけれど、大人にもなりきれていない。どちらの感性も持っている人のような気がします。無邪気だし、自分の感性を大事にしている。一方で当時のロンドン演劇界では、『ピーターパン』のようなファンタジー作品を上演することはありえない風潮だったそうです。そんな中、ある種革命的な一歩を踏み出す勇気を持っているという部分ではとても強い人物でもある。すでに色々な面が見えて、とても魅力的な人物だなと思っています。

バリは父親ではありませんが、父親的な性質を持つキャラクターかと思います。実生活でもお父さんの山崎さんですが、普段の生活で感じていることが役に活きてきそうですか?

それはもちろんあります。今、毎日子どもと向き合う日々で、子どもの温もりをダイレクトに感じていますので。毎日「〇〇ごっこ」をやっているんですよ(笑)。お化け屋敷ごっこ、お料理を作るごっこ遊び……それこそ海賊ごっこも。子どもの想像力は本当にすごい。遊びの中で、そこに存在しないものをあたかもあるかのように作り上げてしまう。この間は、車を運転していたら対向車を指して「あの車はティラノサウルスだ! 撃てー!」とかやっていました(笑)。その目を見ると、彼らは本気なんです。本当にその姿が見えているんですよ。『ファインディング・ネバーランド』では、PLAY(演劇)はもともとPLAY(遊ぶ)からスタートしているというとても大きなキーワードがあります。それは子どもとの交流、日々見ている景色からとても実感すること。今の自分だから伝えられることもたくさんあると思います。

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ちなみに山崎さんは子どもの頃、ピーターパンは好きでしたか?

ディズニーが大好きで、ディズニーのビデオを集めていました。その中で『ピーターパン』もずっと見ていたし、大好きな作品のひとつです。昨年もミュージカル『ピーター・パン』を観に行きましたよ! 僕自身、「大人になりたくないな」ってずっと思っていたタイプ(笑)。今もこうしてカッコつけて話していますけど、自分はまだ子どもだと思っているし、中身は中学生の時から何も変わっていないと思う。基本的にずっとふざけているし(笑)。

そうなんですね、今は“ちゃんとした大人”に見えますよ(笑)。演出の小山ゆうなさんとは何かお話されましたか?

まだ具体的なことはお話していないのですが、この作品は演出上の仕掛けがけっこう重要になります。ブロードウェイの公演ではキラキラ舞う紙吹雪や、子どもたちが(人の手で)リフトされて空を飛んだりと印象的なシーンがいくつもありました。日本版はそういったところをどうするか考えているところですとおっしゃっていたので、僕自身、楽しみだなと思っています! それから共演の濱田めぐみさんが、小山さんとご一緒されており (ミュージカル『COLOR』)、とても役者に寄り添い、同じ目線で物事を考えてくださる方だとおっしゃっていたので安心したのと(笑)、あとめぐさんは小山さんのことを「ロマンチックな方」だとおっしゃっていましたね。どういう意味だろう? と思いつつも、ロマンチックという言葉は、この作品にとても似合う気がします。演出家と役者という関係性ですが、その壁も超え、この日本初演の『ファインディング・ネバーランド』を“一緒に”作り上げていきたいです。

現時点で山崎さんは、この作品のテーマは何だと考えていますか?

やっぱりイマジネーション、想像力だと思います。子どものうちは想像力を使いながら遊んでいても、大人になるとそれは薄まってしまう。でも一方で、大人だって想像力があるからこそ作り物のエンターテインメントを楽しむことができるんですよね。僕らの仕事は想像力から生まれるし、そこに価値を見出し、人は自分の心を満たす。仕事は大変だけど、来月旅行に行くから頑張ろうとか、それこそ週末に観劇に行くのを楽しみに頑張ろうとか、それも想像力。想像力があるだけで心が温かくなったり、前向きになれたりする。それは生きていく上でとても大切なものだと思う。子どもの想像力と大人の想像力は違うかもしれないけれど、『ファインディング・ネバーランド』には両方があると思います。

映像に活躍の場を広げている一方でミュージカルには引き続き多数出演されている山崎さんですが、再演モノではない新作ミュージカルへの出演は7年ぶりですね。その思いなどもお聞かせください。

そうなんです。僕はもともと『レ・ミゼラブル』が大好きで、その後も『ミス・サイゴン』に出たいとか、『エリザベート』『モーツァルト!』……先輩たちが作り上げてきた憧れの作品に出演し、チャンスをいただいて成長してきました。そして今、齢を重ねていく中で、それこそ『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』のように長く愛されるものを生み出したい、その第一歩に携わりたいという思いが強くなっています。
憧れだった『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『モーツァルト!』という4つの作品を全部やらせていただいて、次のステップとしてテレビの世界に足を踏み入れたのが29歳の時。それから7年がむしゃらに走ってきて、ほぼいつ休んだかわからないくらい、自分が3人いるんじゃないかってくらい(笑)、頑張ってきました。ドラマ、バラエティ、映画と色々なことを経験させてもらって、結果思うのは、やっぱり自分が一番好きな場所は舞台なんだなということ。お客さまとその時間、その時にしかないものを共有するあの瞬間がたまらなく好きなんです。その大好きな舞台作品をゼロから立ち上げる瞬間に携わり、それを長く愛される作品にしていきたいというのは、ひとつの大きな目標です。ですので今回はそういう意味でも気合いは入っています。新作だと台詞の細かい部分や歌詞のはめ込み方なども一緒に相談しながら作っていくことができます。今の自分がやる意味が、そういうところにも出てくるかなと思う。皆さんに愛される作品にしていきたいし、その結果、僕の代表作と呼ばれる作品になるといいなとも思っています。

山崎さんのご活躍ぶりからすると、山崎さん目当てで、初めて劇場に生の芝居を観に来る方もたくさんいるかと思います。そういう方へ向けてのメッセージを。

ミュージカルって、観る人の好みが分かれると思うのですが、この作品に関しては「嫌いな人、いるの?」と思うくらい、どの世代の人の心にも届くものだと思います。お子さんにも、家族連れにもふさわしい作品ですし、ミュージカルに普段馴染みがない方が観ても、この作品は何かを持ち帰っていただける。僕は今、映画やドラマでも仕事をさせてもらっていますが、舞台の醍醐味は、観客が想像力を持って、その作品を受け止めるというところだと思います。皆さんそれぞれが想像力を使いながら、ご自分の感性で作品を楽しみ、体感してもらう時間になる。そしてこの作品はその想像力が掻き立てられる物語ですし、ストーリーも楽曲も良いので、特に初めて観るミュージカルとしては、もっとも向いている作品だと思います。ぜひ観に来てください!

(取材・文・撮影:平野祥恵)